故郷
私は広島県の出身で、でもいわゆる厳島神社とか原爆ドームのある広島市の方の出身じゃない。
東の方のど田舎と言ってしまうとさらに山奥の人に申し訳ないし、けれども街とは全く言えないような町の出身です。
だからあんまり広島出身なんですね!と言われると「ああ、まあ、そうです、、」となんだか後ろめたくなる。さして広島トークもできない。(お好み焼きは好きなくらいかな)
さらに別の角度からいうと、正直地元に友達が少ない。ほとんどいない。
生まれて小中高と地元の公立校に通った。その当時から友達がいなかったわけでは無い。(まあ、多い方ではなかったが。)
ただそこまで親友と言えるような、共に成長し感性を育てあうような仲の友達ではなかったのでは無いか。(当時の友人はいい人でしたよ。楽しかったし。)
大学進学を機に地元を離れ自然とそんな人たちとは疎遠になった。
大学生活を送ったのは大阪である。
そこでそれまで出会ったことのないような人々と出会い、昔の自分からは想像もつかないくらい多くの友達ができた。ふざけあい、将来と向かい合い、己の感性が溢れるのを楽しんだ。
4年間の生活で大阪の土地にも慣れた。
では大阪がいわゆる第二の故郷。いや、もしかしたら私の心の故郷なのかもしれない、と思う。
しかし、しばしばその考えが、つーんと突き放される時がある。
忙しなく歩く多くの人々、誰もが自分のことを全く見ていない。誰もが誰もに無関心で。そんな道をひとり歩くとパーンと暗い何もない空間に投げ出された感覚になる。
わたしにはホームがないのかもしれないな。と思う。それでも、なんだかんだ大阪は今の私のホームである。
話はまたまた変わって、今、東京にいる。単なる旅行だけど。
大阪よりも多くの人達が私の知らない世界を歩いている。電車は無機質に走る。
半年後、私の日常の舞台は東京に移る予定だ。
いつかここがホームになるんだろうか。
もしかすると今後大阪の人達と疎遠になって、東京の人達と深い生活をするんだろうか。
それからまたどこか別の地に移ったとして、東京が私の故郷になるんだろうか。
もしかするとそれから海外にいるかもしれない。だったら、日本というのが私の故郷になるのかもしれない。
そうなると、この車窓から見える車のナンバーも桜の木も、河川敷の野球少年も、車内の吊り広告の無秩序な文字の並びも、全てノスタルジーか。
ただ、まだそこまでは愛せないな。
とりあえず今を抱きしめるだけに集中する、したい。